アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

2015-01-01から1年間の記事一覧

クリヴィツキー「スターリン時代 元ソヴィエト諜報機関長の記録 第2版」

わたしは、レーニンの密接な同志たちが、かれらの創建した国家の手にかかって死んでいく間に、スターリンが完全な権力の座に登っていくのをみた。けれども、他の多くの人たちと同様、わたしは、指導者層の誤謬がどのようなものであろうとも、ソ連邦は、今な…

「日本の農村・農業が壊されていった過程」 宇沢弘文

宇沢: 戦後、日本の農村を壊していった過程には、いまから考えると市場原理主義的な考え方が基調としてあった。一九六一年の農業基本法は、農業、とりわけ水田耕作に、アメリカで當時流行していた耕作形態を取り入れようとするものだった。農水省が中心にな…

フィヒテ的自我「自我には外が無い」

私:物の性質は私自身の状態の感覚に由来し、物が充たしている空間は直観に由来する。思考によって二つのものは結合される。前者は後者へ運び移されるのである。・・・すなわち、本来私の状態にすぎないものが空間のうちに定立されることによって私にとって…

ナグ・ハマディ文書におけるグノーシス

ナグ・ハマディ文書の大半はグノーシス主義文書である。もちろん、一口に「グノーシス主義」と言っても、西暦紀元の前後のユダヤ教の周縁に登場したものから始まって、三世紀以降に隆盛を見るマニ教まで、複雑多岐にわたる。ナグ・ハマディ文書には、すでに…

フィヒテ「人間の使命」ー自我の世界

靈:・・・従ってわれわれは当面空間そのものだけを問題にし、単なる意識からの空間の成立を明らかにしさえすればよいであろう。靈:物は代理人を通じて汝に現れるのではない。現に在り、また在りうる物を汝は直接的に意識するのである。汝が意識するもの以…

「死の経済學」と空爆の思想

内橋: 戦時のKill-Ratio、平時のDeath-Ratio。通底しているのは、人間の「生命」をも「効率」という天秤にかけて篩い分ける手法ですね。「最小の費用で最大の効果を」という冷厳な合理主義は、戦時下でも平時でも、そして人間の生命も生存条件も、決して例…

ナチズムは死なないことについてのメモ#3(創成期ナチス党と大衆の気分)

当時のナチス党の活動には、後年のナチスの恐怖政治を認知できるような徴候があったであろうか、とフェルプスはたずねる。たしかに、この時代からナチス党の集会は暴力に支配されており、反対派に対するテロルははげしかった。途方も無い嘘でかためられた毒…

ナチズムは死なないことについてのメモ#2(創成期ナチス党におけるヒトラーの演説)

大衆はヒトラーやナチス党の演説のどのような個所に拍手喝采したであろうか。フェルプスによれば、第一にはユダヤ人に対する攻撃。ついで、臆病でかつ腐敗した政府に対する攻撃。つぎは、革命を起こした「犯罪人」、ヤミ商人や暴利行為者、ベルリンからの分…

キング牧師のベーシック・インカム運動

山森: では、今私たちがBI(Basic Income)を要求するときにどうしても抜いてはいけないのは何かと言えば、それは60,70年代のBI要求なのではないかと思っています。なぜならそれが、私の理解では、昨今のBI議論の大きな根っ子になっているからで…

マクナマラ、アラン・エントホーフェンと「死の経済學」、あるいは「市場原理主義と東京大空襲」

当時の労働党はかなりラディカルで、ベヴァリッジの案を具体化するため、・・・1948年にナショナルヘルスサービス(NHS)として理想に近い形で実現することになったわけです。これはすべての国民(居住外国人を含めて)が無料で医療サービスを受ける…

「帝国」の外へ!

生き続ける限り、自分が背教者であるという意識はぬぐいきれない。しかし自分がいったい何に対して背教者であるのか? その「信仰」自体がまだ分かっていないのです。だから、ぼくには、まだ、殉教のときは訪れない。そして、生きている間に殉教のときが訪れ…

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #32

Das, was ich da gezeigt habe, das führt dann aber wiederum aus dem Menschen heraus in den Kosmos hinein, 私がここで明らかにした内容は、 さらに、 人間の問題から、 宇宙へと通じていくものでもあります。und man lernt ihn erkennen, so wie man so…

ナチズムは死なないことについてのメモ #1

最近では、 ナチズムをドイツ支配勢力の中核とみる立場から、 ヒトラー個人が第三帝国で演じた役割を過大評価しない傾向が強くなっている。第三帝国の政策の大部分は、 ドイツ支配勢力のエリートたちが計画し実行したものであって、 「戦争犯罪」がもしも問…

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #31

Während das Intellektuelle sich emanzipiert, mit dem Zahnwechsel frei wird, selbständig wirkt, 歯の生え替わりとともに、 知性が解放され、 自由になり、 独立して働くようになる一方で、wird das Willentliche bis zur Geschlechtreife frei. 性的成…

「死体は砂のなかに埋めることだ」 言葉たちが私の死体に砂をかける 砂の上を去って行く觀念の足跡 腐肉から流れ出す欲望が砂のなかに消えていく 眼球の孤独 世界の拡がりは砂に埋めよ 頭蓋から外れた脳髄は青空に驚く 肉体の遠近法 永遠に届き得ぬその消失…

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #30

Das verfolgt man, wie es gestaltet, wie es in den Zahnwechsel hinein die Kräfte treibt. われわれは、 それらの力がどのように形成し、 どのように歯の生え替わりに導くかを探求します。Indem man die Beobachtung ausdehnt über die Zeit, sieht man, …

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #39

Jetzt, indem der Zahnwechsel eintritt, wird das Seelische ein anderes. 歯が生え替わり始めると同時に、 魂的なるものも違うものになるのです。Die Begriffe bekommen Konturen. 概念が輪郭を得る(はっきりしてくる)。Das ganze Erinnerungsvermögen, …

連続体の迷路、あるいは「内側に無限」であることについて

個々の自然数は数論の主題を形成し、 自然数の可能的集合(または無限列)は連続体の理論の主意である。(b)連続体の本質的な性格はAnaxagorasのものとされている断片の中に明瞭に記されている: ”小さいものの中に最小のものは無く、 常により小なるもの…

【アマゾン・レビュー】いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2001/10 ルドルフ シュタイナー (著), Rudolf Steiner (原著), 高橋 巌 (翻訳)

形式主義の迫力 投稿者 庭師 投稿日 2006/5/28 形式: 文庫 「いかにして・・」は一気通巻に読み通してみると、極めて劇的な構成になっていることに気付かされる。締めくくりは、ひとつの最終的な解脱を迎えた人間の取る道が二つに別れるという話。自分一人が…

詩の時間・神の時間

自分の詩について解説することは、野暮だし、恥ずべき事でもある。自己弁護に堕す可能性が高い。そこで(しかし)、自分のメモとして書いておく。神の意識の中では、過去も未来も無く、すべてが現在である(創造も今現在ここで起きている事實である)。無限…

フィヒテ「人間の使命」第一巻「懐疑」第一章「自然」

直接的自己意識においては私は自由であると思われる。しかし全自然について省察すると、私は自由は全く不可能であると思う。前者は後者に從属させられなければならない。なんとなれば前者そのものの説明さえも後者を俟ってできるのだからである。☆「自然の決…

それは巨大な花のように咲き誇る夏の正午 ぼくは君になり君はぼくになる 燃え熾かる世界の官能の中心で 結ばれる 君は白く美しい 君の熱とぼくの熱が世界を溶かしていく 君の声がぼくのなかにいる ぼくの光が 君のなかで炸裂する ぼくの光が 君を愛している…

青い妖精の池(初稿)

巨人はロリータを肩に乗せて歩き始めました。「白鳥の乙女よ。 決してその羽衣を無くさないでください。 あなたたちに風が必要なように、 わたしには眠りが必要だ。」巨人は深い眠りの池に向かって歩いて行きました。 青い妖精たちの棲む池です。「いいえ。 …

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #38

Es fällt auf, wie von dieser Epoche an unser Vorstellen anfängt, Konturen zu haben, wie es anfängt, zu fortlaufend erinnerbaren Vorstellungen zu werden. この時期を境に、 われわれの表象(活動)がどのように始まり、 輪郭を持ち、 それがどのよ…

心臓

雨は非我の見えない脚 そして心臓の形に集まり 血のように溢れてしまう 私の心から 繁茂する植物たちの匂い 緑の階梯が天まで延びて行き 見えなくなる レントゲン写真 肩胛骨は先が尖っていて 巨神兵のようだ 私の肉体に隠れている巨神兵質量因の憧憬するも…

量子論における因果律の”破綻”(マックス・ボルンによる解釈)

われわれは系の瞬間的な状態を函数ψで記述するが、それ(ψ)はある方程式(シュレジンガー方程式)を満たし、それ(シュレジンガー方程式)に従って変化する。そこでは、その振る舞いは、時間t=0におけるその(函数ψの)形によって完全に決定される。した…

決定論に関するメモ (フィヒテ「人間の使命」)

他人のものは一切廃棄されよ。私はみずから探求しよう。 フィヒテ「人間の使命」私は諸現象の閉じた連鎖の一項となる。 因果的連鎖が閉じているということは、連鎖外からこの連鎖に進入することはできない、従って連鎖の方向を変えることはできない、という…

友人には魚が見えない夢

大学時代の友人と川べりに来ている。梅雨時の今と同じようにほの暗い。友人が釣り竿を振り始めた。ここで釣れるだろうか。友人が針を投げた”ポイント”は、浅く、釣れそうに無い。私は別のよどみを指したようだ。魚は見えるだろうか。そう思っていると、今ま…

猫を失う夢

私は猫(実際に飼っている)を抱いて、(夢でいつもしているように)知らない街をさまよっている。北千住のような気がする。土手の向こうは川で、私は土手の下を歩く。土手の下の道を振り返ると、廃れたバラックのようなものが重なって、門のようになってお…

「人智学、その本質および哲学的根拠について」 ベルン 1920年(大正9年)7月8日;独逸語の勉強 #37

Und wir sehen そして、 私たちは観るのです。 - ich kann nur andeuten -, (私はただ示唆するのみですが)wenn wir das Seelische betrachten, 魂的なるものを私たちが観るとき、erstens dasjenige, まず最初に、was ich ja schon öfter auch hier von die…