アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

量子論における因果律の”破綻”(マックス・ボルンによる解釈)

 われわれは系の瞬間的な状態を函数ψで記述するが、それ(ψ)はある方程式(シュレジンガー方程式)を満たし、それ(シュレジンガー方程式)に従って変化する。そこでは、その振る舞いは、時間t=0におけるその(函数ψの)形によって完全に決定される。したがって、その振る舞いは厳密に因果律的である。
 一方で、物理的意味は量ψ*ψ、あるいはその他同様に得られる二乗項に”閉じ込められて”おり、それらからは、部分的にしかψを定義できない。これはすなわち、物理的に決定できる量がt=0において完全に知られていたとしても、函数ψの初期値は、必然的に、完全には決定できないことを意味している。
 この間の事情は、以下と同意義である。すなわち、事象は完全に因果的に生ずる。しかし、われわれは、その初期状態を正確に知ることはできない。この意味で、因果律は空虚になる(破綻する)。物理は非決定的論的な性格であって、したがって、統計の問題になる。   

粒子の運動は確率的法則に従うが、その確率自体は、因果律にしたがって(空間を)伝播する。

量子力学テキスト(英文)中の引用からの試訳」