アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

【アマゾン・レビュー】いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2001/10 ルドルフ シュタイナー (著), Rudolf Steiner (原著), 高橋 巌 (翻訳)

形式主義の迫力
投稿者 庭師 投稿日 2006/5/28
形式: 文庫
「いかにして・・」は一気通巻に読み通してみると、極めて劇的な構成になっていることに気付かされる。締めくくりは、ひとつの最終的な解脱を迎えた人間の取る道が二つに別れるという話。自分一人が救われてしまう道もあるが、再度、「共苦」の世界へ帰ってくる道もある。前者は黒い道で、後者が白い道である。白い道とは、世界に一人でも不幸な人がいる限り、この世に戻ってきて、救済のために働くという選択であると言う。シュタイナーの同時代人、宮沢賢治が日本の岩手県で全く同一のことを言っているのは、覚者にとっての真理がひとつであるという証拠なのだろう。少し旧いが、「ユリイカ2000年5月号」がシュタイナーの特集号で、高橋巖先生も対談している。さっきそれを読み返してみて感じたのは、自分などは、人智学=原理主義者であり、今となっては旧いタイプかも知れないと言うことだった。高橋先生は人智学の「脱神話化」を話題にしている。それは誰でもが考えることであろう。霊的な問題を物質世界の言葉で語ること自体がはらむ困難が、このような問題を後に残すわけだが、当時の四面楚歌の状況下であくまでも論理的な記述に終始した「いかにして・・・」から受ける印象は、一見、命題・定義・定理・系等々の数学的形式性による体系に近いものがある。しかし、このような形式主義こそが物質界を超えたイデア的存在を記述する上で、もっとも適したものであることも事実なのである。そして、このような形式主義的な記述によって破綻を来さず、むしろconsistent(首尾一貫している)であることが、イデア的、有機的実体の特徴でもある。そのような迫力を持って、霊的世界、人間の本来的な霊性を記述した本書は、やはり、人類史に残る名著の一つ。