アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

科學の影

研究報告會。何十件も発表があった中で、ぼくの講演が一番受けた。質問攻めにあう。ただ、日頃からボンヤリ思っていた科學観の相違がはっきりした。見えないものの影からその本体の像を描くのが科學だと私は思っているが、日本の一般の研究者は、本体が見えなきゃ科學じゃ無いと信じているらしい。

本体が見えないにも関わらず、その影を追い続けることで、正確な本体の像にたどり着くのが科學の醍醐味なのだ。技術的な進歩が本体を直接見せる何十年(百年)も以前に本体の像を得てきたのが科學の歷史である。日本の彼等は感覚的認識に偏ったべったりした現実主義みたいなものを科學と勘違いしてる。

基礎的な素養の問題もあった。いちいち基礎から説明していたら、とても制限時間に収まらない。当然前提とされるべき基礎を知らないのは、今の大学が応用重視で、学問の歴史性・体系性を蔑ろにしてきた結果だ。その対象を扱う際の基礎的水準を確保していなければ、滑落も免れない。