アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

魔女の医学

それは、キリスト教徒たちが識っており尊んでいた唯一の医学とは、一般的に云って反対の、アラブ人やユダヤ人たちに学んだ、さかさまの医学であった。

どのようにしてこの医学に人々は到達したか? おそらく、いっさいはさかさまに行われねばならないという、神聖な世界の行っているところと逆のことを正確に行わねばならないという、偉大なサタン的原則のきわめて単純な結果をつうじてである。

神聖な世界は毒薬に対する懼れを抱いている。ところがサタンはそれを使用し、毒薬を薬品に変えてしまうのだ。

ローマ教会は精神的手段(秘蹟、祈禱)をつうじて、肉体にさえ働きかけることができると信じている。ところがサタンはさかさまに、物質的手段を用いて、魂にさえ働きかけることができると信じている。

サタンは、忘却を、愛を、夢想を、どんな情熱をも呑みこませる。サタンは司祭の祝福の言葉に、女たちの優しい両の手の力を借りて、もろもろの苦痛を眠りこませる磁力的な按手を対立させる。

       ジュール・ミシュレ「魔女・上」篠田浩一郎訳、現代思潮社、1967年