アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

木原孝一のプラトニズム

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なぜなら、人間の二分の一、半人間としての男性の眼が見通しただけでは、この世界に在るすべてのものの意味はみえないからである。

それらのものの、全体的な意味を見いだして、それを読み取るのは、半人間である男性と、もう一つの半人間である女性の、この二つの眼が一つの眼に合致して同時に世界を凝視したときである。

私たちが全き個である人間としての自己を意識し、全体性を求めてその二つの眼の一致を求めはじめたとき、私たちは詩への渇きを感じる。詩と愛とに対する高貴なる飢えと渇きは此処から始まるのである。

       木原孝一「現代詩入門」1985年、飯塚書店
                
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木原孝一は、硫黄島の生き残りなのですが、全く荒んだところや斜に構えたところのない精神がすごいです。私の持っているものは1985年、チェルノブイリ事故の一年前に三刷された著者没後の出版ですが、ほんとうに若く、腐ったところが全くない。どうすればいいんだろう。自分は。たじろぐほどです。