アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

アリストテレスの自然哲学「物質のありかた=必然、自然の根底=目的」(ヘーゲル哲学史講義)

(β)目的とならぶ自然のもう一つの側面 ー自然における必然のつながりー も、
アリストテレスは的確にとらえています。

・・・
「家はこうした必然(物質的な必然)なしにはつくりだされないが、
こうした必然(関係としての必然)を実現するためにつくられたのではない。

なにかをめざすもの(なにか目的をもつもの)はすべてそうで、
それらはその性質からしてまもらねばならぬ必然なしにはなりたたないが、
その必然のゆえに存在するものではなく、
必然はたんに物質のありかたをいうにすぎない。

必然性はある仮定のもとになりたつにすぎず、
それが目的なのではない。

物質については必然性をいうことができるが、
自然の根底にあるのは目的である。」

また、

「必然性は、
自然の事物が物質であり、
物質の運動であるかぎりで支配力をもつ。

二つのもの(目的と物質〔必然的なもの〕)が原理としてたてられるが、
目的のほうが高い原理であり、」
ものを動かす真の根拠である。

目的は、
物質的な必然性を必要とはするが、
それをみずからの支配下におき、
それが勝手に動きだすのをゆるさず、
外的な必然性を抑止する。

物質の原理はゆがめられる可能性があって、
必然のつながりに変更をもたらすのは、
自然を思いどおりに維持しようとする目的である。

必然性とは、
自然の行為が二つの契機にわかれるときにみえてくるもので、
たとえば、
アルカリと酸という両極があらわれる場合、
中和という関係が本質をなすものに見える。
    
ヘーゲル哲学史講義・中巻・Bアリストテレスの哲学・二自然哲学)
長谷川宏