六月の水に溶けていく
弱い獣
秘密と韜晦の張力に耐えきれない
水面の膨らみから
押し出されてくる
毛と骨とわずかな肉
「人はどんなときに黙るのでしょう?」
それはきっと悲しいとき
死にたいとすればそれは愛ゆえに
生きたいとすればそれも愛ゆえに
「今日は学生に、核子(=原子の素の粒子)が越えられない壁を越える話をしました。それがなければ、この宇宙も地球もきっと存在しないような"奇蹟"について。」
それから核子は架空の喫茶店に入ってくる。建物の下はガラス張りで、彼女の脚だけが見える。夏らしい紺色のワンピースに白い水玉模様。きっとつばの広い帽子をかぶって、(いつものように)生きることが腑に落ちないという表情を浮かべている。彼女はこの壁を通り抜けるだろうか?
あなたの欲望が
極微の狭い
苦しいジグザグの通路を探りながら
天と地を短絡する
その一瞬の閃光を
私はこの手でつかみたいのです
質量因として必然に従うだけであれば
人格はこの水に溶けていくだけだ
形相因が必要とされる
この”シュピール・ラオム”に
隠された目的因
さもなくば
肉体を駆る
動力因が
私とあなたの間で
いつものように笑っている
アリストテレスの朝