この三月以来、日本列島に降臨して暴威を振るい始めた悪魔の正体が知りたい。地獄からやってきた刺客たちの顔も知らずに、みすみす殺されてしまうのは、口惜しく、成仏出来ない可能性もある。せめて、彼らの本質を知ろうではないか。
原子力発電の基本的な仕組みは、以前の記事に詳しいので、ここでは、原子炉の形式と、明日作業があるという高速増殖炉「もんじゅ」の基礎的な原理を紹介したい。
図0 ボーア・フイーラーによる核分裂反応のモデル。ウラン235を原料とする熱中性子(遅い中性子)による核分裂反応を示す。
図1 加圧水型原子炉を例にした原子炉の概念図 (再録)
図2 沸騰水型原子炉(上図)と加圧水型原子炉(下図)の模式図
まず上の図1を見よう(図はダブルクリックで拡大して見やすくなります)。詳しくは以前の記事を見ていただくとして、加圧水型原子炉の概略である。圧力容器内部に冷却水が満たされ、この水が数百気圧に加圧されているため、冷却水が(一気圧における)沸点である百度以上に加熱されても、液体に留まっている。この一次冷却水をポンプで回して蒸気発生器に導入し、二次冷却水を加熱して蒸気に変え、右上の発電機タービンを回す。二次冷却水にもポンプが必要である。これらのポンプ類が停電で使えなかったことが福島の惨事を招いたわけであるが、原発は外部から電気を供給されないと安全運転が出来ない発電法だとは、事故が起きるまで誰も知らなかったのではないだろうか。ダビデ少年に石ころ一発で倒された巨人ゴリアテのようだ。
図2はさらに簡略化された図であるが、下が加圧水型で、上が沸騰水型原子炉。福島第一原発の4機はすべてこの沸騰水型で、圧力容器内部で直接核燃料に触れる一次冷却水が、そのまま発電機タービンを回す仕組みである点が、加圧水型と異なる。
Core (Fuel elements)が核燃料棒(コア)、Control rods が制御棒。前回書いたように(図0参照)、核分裂を発生させるための入射中性子一個に対して、核分裂によって発生する中性子が原理的には2個で、このままでは、連鎖反応によって(原理的には)核爆発になってしまうため、発生した余分な中性子1個を取り除かなければならない。そうすれば、入射中性子1個に対して、核分裂後に得られる中性子も1個で、反応が定常的に進行する。その余分な中性子を取り除くことが制御棒の役割で、重要である。チェルノブイリ事故の際は、通常よりも高い出力を発生させる”実験”に挑戦し、この制御棒を通常よりも多く引き抜いた結果、核分裂反応が暴走し、制御不能になって、爆発が起きたということである(以前見たテレビ番組による)。福島第一原発の場合、地震発生時この制御棒はすべて自動挿入され、このような惨事は免れた。ちなみに、福島第一原発で使用されている制御棒は、十字型で長さ4.5mのステンレス製であり、内部に炭化ホウ素とハフニウムが入っている(Newton・2011/6号による)。ホウ素やハフニウムは中性子吸収能が高い。
更に、ウラン235を効率的に核分裂反応させるためには、図0(a)の入射中性子が十分遅くなければならない。熱運動程度の遅さである。一方、図0(f)にある反応の結果発生する2個の中性子は、莫大な核エネルギーを担っており、超高速すぎる。そこで、この発生した超高速中性子を十分遅くしなければならないが、そのために、ここでは水を用いる。図3でthermal neutronがこの遅い熱中性子、fast neutronが超高速中性子。Moderatorが緩衝材で、ここでは水だが、炭素(グラファイト)を用いる方式もある。
以上が通常の原子炉の方式で、前回の記事に書いたように、この熱中性子を用いる反応で使える燃料は、ウラン235とプルトニウム239であった。しかし、同位体の存在量としてはウラン238が圧倒的に多く99.7%で、このプロセスで燃料として使えるウラン235は0.3%しかないため、非常に手間のかかる濃縮の過程が必要である。そこで、以下の反応式をながめてみる。
上記の二つの反応では、入射中性子(n)は、核エネルギーを担ったままの高速中性子であり、上の反応式では、二回のβマイナス崩壊を経て、プルトニウム239が生成している。つまり、燃料としては使いにくいウラン238が、核燃料として使えるプルトニウム239に変換されているのだ。
βマイナス崩壊と云うのは、原子核内部の中性子1個が陽子1個に変身してしまう崩壊過程で、その際に、βマイナス線(電子)とガンマ線が放出される。上の方の式では、まず、239U(原子番号が92、つまり陽子の数が92個)が、その結果、239Np(原子番号が93で、陽子数が93)に変換される。更に、239Npが、βマイナス崩壊をして、239Pu(原子番号が94、つまり陽子数が94)に変換されている。図4の周期表をながめると、以上の過程がよく分かると思う。
ここで、入射中性子1個に対して、生成する中性子の数を2個(以上)にすれば、(原理的には)そのうちの1個が上記連鎖反応サイクルを定常的に維持するために用いられ、239Puを生産し、残りの1個は核分裂反応で核エネルギーを発生する方の寄与にまわすことが出来る。これが、高速増殖炉の原理である。この結果生成された239Puは、十分生成された段階で核燃料として炉から取り出さなければならないが、面倒な濃縮過程よりも、この使用済み核燃料から239Puを化学処理で生成する方が簡単であるとされる。
上記2反応式の下の方の反応に移る。ここで、熱中性子では核分裂が生じない232Th(トリウム232)を原料として、上と同様な原理により、熱中性子で核分裂が生じる233Uが得られる。このような熱中性子で核分裂しない原料を、熱中性子で核分裂する燃料に変換してしまう原子炉を増殖炉と呼ぶ。トリウム原子炉もその意味で、増殖炉である。又、用いる中性子が高速なので、高速増殖炉と呼ぶ。
”もんじゅ”は使えないウラン238を使えるプルトニウム239に変える夢の増殖炉だ。しかし、仮にこのプロセスが、うまく作動したとしても、取り出した生成物のプルトニウムを燃やした後で、処理しようのない核廃棄物が残されるだけであることに変わりはない。
図5 高速増殖炉の模式図
さて、準備が整ったところで、高速増殖炉の構造(図5)をながめてみよう。ここでは、燃料中心部(Core)が235Uと239Puで構成され、通常の熱中性子による核分裂を受け持つ部分(緩衝材はグラファイトであろう)であるが、ブランケット部分(Blanket)は238Uで、プルトニウムを製造するための原料になる。
この原子炉の特異(非常識!)な点は、ナトリウムを冷却材に用いている点である。
ここで通常の原子炉のように水が冷却剤として使えないのは、水は中性子の緩衝材であって、超高速中性子を熱中性子程度の速度に落としてしまうためである。そうなると、上記の式にあったような増殖反応が進行しない。そこで、一時冷却剤に液化したナトリウムを用いる。そして、二時冷却剤も、図にあるように、ナトリウムを用いて、原子炉容器外にポンプで導き、その二次ナトリウム冷却剤で三次冷却剤の水を沸騰させ、発電に用いる。この方式では、冷却剤(熱交換の溶媒)ナトリウムが中性子で照射され続けるが、そのためにのナトリウム自体が放射化する。すなわち、放射性物質になってしまう。この放射化した多量のナトリウム自体も非常に怖ろしい存在だ。
そして、この図を見て震え上がらないとしたら、何を怖がればよいのか。
ナトリウムの冷却管は、熱伝導を考えて、極めて薄いぺらぺらな構造にせざるを得ないと言う。その弱い配管が、510℃の加圧された水の中をくぐるわけである。よく知られているように、ナトリウムは水と激しく反応、発熱する。まず、誰もが注目してしまうのは、この水蒸気発生部分であろう。福島で明らかになったように、原子炉は、冷却系統(熱交換部分)が壊れればそれで、すべて終わりである。”もんじゅ”はその危険性があまりにも大きく、もはや原発ですらなく、民族自滅兵器と呼んだ方が正しい。日本民族壊滅を図る陰謀だとしか思えない。これを進めてきた人たちは、狂っている。全く理解不能だ。気違いだ。気違いに原発、それが今の日本の現実なのだ。
追記
この記事で紹介している図は、教科書などからの引用で、きわめて簡略化されていますが、その方が、かえって、本質が見えやすいのです。ビジュアル的に立派な雑誌Newtonにあるような図は、丁寧すぎて、本質が何処にあるのかが分かりにくい場合が多いと思います。
追記2(6/26)
”もんじゅ”の場合、福島のような冷却系統の事故が起きてしまえば、仮に福島のように初期の核分裂停止(スクラム)がうまくいったとしても、その後発生する停止初期の膨大な発熱は、水で冷却することは出来ません。ナトリウムの系に水を導入すれば、爆発してしまいます。為す術もなく、手をこまねいて、大爆発するのを眺めている他にない。日本壊滅です。これは絶対に、稼働させてはならない原発です。