マルキオンの与える生活の掟は禁欲的である。
だがそれは傲慢の禁欲主義である。
この世の富を軽蔑しなければならないのは、
「創造主」に対する憎しみによってである。
造物主の支配にできるかぎり手がかりをあたえないようにせよ、
それがマルキオンの理想である。
そこからもっとも極端な禁欲主義が導き出される。
そしてマルキオンが性欲を断てと説くのは、
旧約の藭が「生めよ、増えよ」と言ったからなのである。
こうしたペシミスティックな世界観と傲慢な受け入れることの拒否のうちには、
ごく近代的な感受性が反響している。
かつまたそうした感受性は、
悪の問題中に根源を見出している。
マルキオンは世界を悪しきものとみなす、
だが藭がその作者であることを信ずることを拒む。
彼の問題解決が贖罪をめぐって行われるのは、
マルキオンがキリストの役割を、
キリスト教徒自身よりももっと野心的に考えるからである。
まさしくある創造の完全な破壊が問題なのである。