悪魔には歷史がない。
多くの仮面を持つが、顔無き仮面、それが彼の本質である。
今日でもたとえばローマ教皇庁のラッツインガー枢機卿などは、
「キリスト教徒にとって悪魔は神秘的ではあるが、
リアルかつ個を持つものであり、
単に象徴的という存在ではない」
と言っている。
そうだとも言えるし、
そうでないとも言えよう。
しかし、
少なくとも過去においては、
中世・ルネッサンスにあってはそうだったというふうに我々は想像するだろう。
しかるに当時の画家たちが考えていたことを仔細に見てみると、
こういう我々の想像は実は間違っていたのではないかと思えてくるのである。