・・・そういうプチ・ブルのプルードンが、パリ・コミューンの指導者たちに絶大な影響力をもつことができたのは、いったいなぜだろうか? この秘密を解く鍵は、マルクスによるプルードン批判にではなく、プルードンの中にこそ求められなければならない。マルクスに痛罵された思想家はプルードン一人ではなく、ラッサールも、バクーニンも同様の立場におかれ、オイゲン・デューリングも、マルクスの盟友エンゲルスに論罵された。しかし私は、これらマルクス、エンゲルスの敵手たちの思想研究を通して、次のような共通点を見いだす。
(一)マルクス、エンゲルスによって罵倒された思想家たちが、例外なく第一級の大人物であること。
(二)マルクス、エンゲルスは、論敵の思想の中で、すぐれた部分、強力なポイントはいっさい評価せず、その弱点のみを最大限に強調したこと。
(三)マルクス、エンゲルスの痛罵を浴びた思想家たちは、しばしば、その得意の分野において、マルクス、エンゲルスよりも数段すぐれていること。
「世界の名著42:プルードン・バクーニン・クロポトキン」(中央公論社・昭和42年)所収「アナーキズム思想とその現代的意義」猪木正道・勝田吉太郎より