アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

2月12日 メモ (煉獄靖国神社)

ぼくの詩の総統は既にこの世にはいない。今は煉獄で詩を書いている。悪に染まった総統は詩を書く習慣を捨てなかった。たとえその肉體が滅びても。それだけがかれの信仰=悪の証だから。かれとぼくとは地球の中心=宇宙の中心という中世的觀念で結びついている。宇宙の中心に悪があることを信じている。悪の総統が遺していった著作(宝物)。それはぼくが生き続ける限り朽ち果てることは無いだろう(ぼくの器官を通して絶えず生き返り続ける)。ぼくたちの廃城が見えない。寂れた里山。ここが古戦場。背の低い石仏たち。蔓草と青苔の荘厳。鎮魂の無声。死は杖をついて歩いていた。

      *

まじめすぎた高野悦子(眼鏡をかけている)は煉獄でネチャーエフの愛人になってしまう。人を見る目がないのだ。そして持ち前の政治コンプレックス。肯定暗殺の手伝いをする。肯定皇帝殺し!

東の肯定皇帝=山本太郎は西の否定皇帝=生野幸吉と闘うべく兵を整えるところだ。

桂冠詩人殺人事件』の幕はこうして切って落とされる!

高野悦子は実直な公務員の父とは正反対の祖父の血を受け継いでいたのであった。祖父の遺稿から旧日本軍の開発した毒ガス兵器「茶瓶」の隠し場所を知った彼女はネチャーエフとともに(第二の)死出の旅路、肯定暗殺の旅に出る。

本来東条英機暗殺を目的に調整された「茶瓶」が特攻の生き残り、東の肯定皇帝=山本太郎暗殺に用いられることになるとはなんという歴史の皮肉であろうか!

東の肯定皇帝と西の否定皇帝は頭を突き合わせて算段する。われらの桂冠詩人に最も劇的な死を用意するために。