アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

ヒュポテシス(古伝梗概)

詩が個人の肉体と同じくらいつつましやかで
それにもかかわらず
(人間の肉体同様に)
宇宙全体に匹敵するという
両極性を貫く一本の棒が私である

繰り返し見てきた魚の夢
しかしなにかが傷付いているらしく
魚たちが巨大化している
幾億万のキリストの群れ!
しかし私にはその背びれしか見ることができない
重大な過誤があるらしく慰めがない

現在を歴史化すること
それは逃避なのか? 
現在を回想することは? 
死者の眼で今を見ることは? 
既に死んだ自分を認めることは?

私はもう以前の自分では無い
そのことを認めれば良いだけかも知れない
世界中の
(過去現在未来の)
人が知っていて
私が知らなかったことを知った
あらゆる古典の中心にあるものを体験してしまったのだ
そこからやり直す
世界という悲劇の中心から

すべての古典は悲劇の練習にすぎない
それを自らが体験するまでの
(来るべき自らの)
悲劇の本質に密儀を見出しうる力を蓄えるまでの

あらゆる音楽は過ぎ去ったものである
過ぎ去った密儀の余韻
決して思い出せない
しかし覚えているもの

私はラブレターを出し続ける男だった
(毎回来る)
返事を一度も開封したことがない
それでもラブレターを出し続ける
それ以外に生きるということの継続はありえないのだ

私の自我の身体はベートーヴェン「七重奏曲」変ホ長調を聴く
少なくとも音楽にとって死は無意味なのだ
死の内実には星が詰まっている!