アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

メランコリー(第三稿)

たしかに、スポーツに没頭することで分泌される脳内物質による恍惚感と、自己を越えた領域で行為あるいは思索することで「救済」される感覚は似ている。それはニュートンによる重力の式とクーロンの法則が逆二乗則として相似形であることに匹敵する「偶然性」への驚きを喚起する人間的出来事ではあるが。

前者が量子論の発見後も無傷で生き残ったことに対して、後者は相対論の顕現による修正を受けることになる。スポーツと、没我的行為と、超然的思索。メランコリーの黒い液体を薄める冷却水は絶えず供給されなければならない。人間の心臓。壊れた原子炉から漏れ続ける黒い液体。

罠に落ちて傷を負った人は、むしろもっともっと傷つきたいのではないでしょうか? そこでこそ魂の死(地獄墜ち)が、たとえ擬似的であれ経験される。むしろそこからしか開かれない世界が見えてくる。

生きている間にどこまで「死」を経験できるか。一番怖ろしく、そして魅惑するものが、「死」の衣裳を纏って近づいてくる。罪を負った人間には逃げる術が無い。その”なにか”と対話し続けることにしか、死の罠に墜ちることを避ける術は無い。少なくとも、恐らく今の所は。

 ☆

土星の闇の中で
翳っていく肉体
黄金の雨となり
降り注ぎたい
退行の大天使
メランコリーは美しい
緑色をしている
ダイダロスの贖罪とは?
地底の迷宮
すなわち永遠の途上
麗しい
性の根源から
五月の樹液のように
滴り落ちてくる
あなたの地平線
真珠母雲耀く
黎明の胎児を宿す