アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

夢魔

マルキオンは死なない
夢魔
君の脳髄をストローで吸いたい
そのときぼくの頭上に広がる君の歌声
それは青空を満たすほどに
失われた天国である物の裏側
影こそが美しい
もどかしげな愛の手つき
そしてぼくの掌を覆う十字架
それは神秘家の徴である
マルキオンは死なない

「彼らが死人の中からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使いのようなものである。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。」

肉欲を司る女神の長い裳裾を引きずる音
「最も美しい女性へ」
夢魔は黄金の林檎を投げる

カモフラージュし接近し刺殺する
背教の環を逃げていく影

マルキオンは死なない
ぼくの脳髄に刺されたストローを吸う
その人