アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

魔女の迫害を禁じた中世初期キリスト教会

そのような魔女観に、中世初期のキリスト教教界は真向から反対した。カール大帝によって招集されたパデルボルンの宗教会議(785)は、「悪魔にまどわされ、異教徒の信ずるごとく、男や女を魔女または魔男として、彼または彼女を死刑に処・・・」したものは死刑に処すると判決をくだした。その原文を読んでいくと、当時そのような魔女迫害者は、魔女のかけた魔術を解くべき対抗魔術(Gegenzauber)の手段として、火刑に処せられた魔女の肉をたべていた、ということも判明する。

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このように、魔女の空中飛行や魔女の会合は根も葉もないものだと明言され、そんなものは空想の領域に属することだ、としてしめだされている。しかし十五世紀末頃には、それまで教会の立場を特色づけてきたこれら諸規則は、「魔女に与える鉄槌」の著者によって、押しのけられてしまった。

 クルト・バッシュビッツ「魔女と魔女裁判ー集団妄想の歴史」川端豊彦・坂井洲二訳
 (法政大学出版局、1970年初版第一刷、1982年第10刷)