アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

バビロニア宗教、ユダヤ文化、アレクサンドロス

・・・バビロニア宗教の影響は秘術や魔術に陥った人々のサークルに限られていた。

ユダヤ文化に精神的展開をなしうる機会を提供していたペルシア世界帝国のこの満ち足りた静けさの中に、アレクサンドロスが闖入したことによって、ギリシャ神話と哲学の、総じてギリシャ文化の新しい理念が西南オリエント世界に流れ込んできた。

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しかしまた他方では、この異邦文化は伝統的なヤハウエ信仰とは両立し得ないと見て、マカベア一族の為したごとく、ユダヤ教の純粋さのために戦うという道もありえたのである。

遂には、秘密の集会にひきこもり、多くの特殊な繁義を取り入れて彼らに固有の聖潔を守ることもできたのであって、それは例えばクムランにおいて、ここに成立した文献や、これに類似した文献に証言されている通りである。

その場合、民全体に何が起こるかという問題は、彼らが「破滅せる集団」(massa perdita)として、厳しい審判の対象となるという意味においてか、あるいは、彼らは教団の救済の時の初めに導かれ、そこから藭の民をめざす兄弟であるとして解決されたのである。

他のグループは、幻想的な黙示文学へと逃避して自らを養い、日常の試練から救済の世界という遠い目標に照準を合わせたのであった。

レオンハルト・ロスト著、荒井献・土岐健治共訳「旧約外典偽典概説」A序説
教文館、昭和47年初版)