アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

体積

みにくいものが肉体を持つと
みにくいものの肉体が
みにくいものは物理的に存在すると
僕に教えるのだ
それは僕の右から
僕の肩を圧迫する
大きな肉である
生きた肉なのだ
黄色い歯につめを立て
赤い顔は不満の影を帯び
毛がぼうぼう生え
世界の体積の
何パーセントを自分が圧迫できるか?
自分の隣の体積に
自分以外の存在が
存在することに苛立ちながら
赤い顔の表面積をさらに膨張させて
不満な下あごと上くちびるを突き出し
ふくれた腹の体積を両掌であたためながら
かれらの体積をおびやかす
子どもの笑い声が
じぶんの体積に入らないように
ミサイルを撃つ
それはぼくの心を
冷え冷えとさせ
世界の身体を巡る血液を
本来の軌道から
逸脱させ
思いもかけぬ方角から
赤い雨を降らせる
言葉と言葉の力が
誤てる方角から
僕らを撃つ
世界の体積は
収縮と
破裂
そして分裂を繰り返しながら
思いもかけぬ表面に
ミサイルの森を隠している
どうして?
どのように?
われわれの肉体と
われわれの言語が
かれらのものと異なるように
笑いと
冷たさが
見も知らぬ方角から
幾百万のミサイルを降り注いで
止むことが無い
ふりしきる感情の雨のなかで
いつまでも
止むことが無い