アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

希望

僕という川が”個人”の流れだけで流れているのだったら、そのかかわる流域の水が流れ込んでくるだけであったなら、それは穏やかでも、美しくも無いかも知れず、むしろ不安で満たされた水は生命から見放され死んだ流れになるしかなかっただろう。毎朝、死が顔を洗いに歩いてくる小川。

死者達は生命の水をぼくの胸のなかに流し込む。ぼくの心臓はそれを呑みこみながら動く。死者達はもはや待ちきれない。生命の流れの氾濫を。洪水がやってくる。それは僕の小川を歷史の大河に合流させる。死者達が叫ぶ。洪水が地面を割って溢れ出す。

希望が、
地の底から、
明るい光を伴って、
ぼくの上に降り注ぐ朝。