アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

基督抹殺論

幸徳秋水は、獄舎で残された人生最後の時間すべてを、基督抹殺に捧げる。近代日本の春、西洋文明の晩夏、テロリスト秋水のターゲットは、もとより明治天皇では無く、西欧文明の神、耶蘇基督だった。抹殺し了わる。それが秋水最後のメッセージである。果たして基督は死んだのか?

 君のために死ねたらどんなにいいだろう!
 君の涙のなかに溶け去って行くことができたなら
 君の涙は私の羊水になり
 君の瞳のなかで私は昇天し誕生するでしょう

而して彼れは亦其記事の前後矛盾の點多く同一基督の傳記にして殆ど別人を叙するが如き觀あるに對し取捨鑑別の甚だ難きに苦しまんとす。

そのときあなたは極東の形而上的テロリストであり
”獄舎に繋がれた文明”の騎士だった
「死んでみ給え」

文明の冬
二十一世紀は
白く
すっかり屍蠟に覆われてしまいました
あなたの指先に点ったかすかな明かり
原子の灰の中からロゴスの鳥が蘇る
果たして基督は死んだのか?