アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

偽書による自画像

天使ラザエルの聖なる書物
シナイ山上聖カタリ派修道院図書室で発見されたアラビア語原稿には
巨大すぎたために箱船に乗船できなかった王と獣についての記述がある

reemというある動物はその巨体故に箱船に乗せる余裕が無かったので
ノアは舟の外側に革紐でつなぎ
この動物は後からのこのことついて行った
バジャンの王オグもまた大きすぎて箱船に乗れなかったので
箱船の屋根に坐り
そのようにして生命を救われた
巨人オグは大洪水ののち五百年間生きながらえたが
モーゼに斧で斬り殺されたという  

友よ
夏が去り
雲間から落ちる光もすっかり透明になりました
青銅の蒼穹から滴り落ちてくる光が世界を腐蝕していくこと
それが秋の時間なのです

 淋しい世界の腐蝕画を吹き抜けるレシタチーヴォ
 つまりガブリエルのおおきな翼の下で安む二人の男の物語
 霊の思想家
 年代記作者にして
 旧ルター派牧師セバスチャン・フランクと
 徹底した信仰普遍主義の故にあらゆる宗派と協調せんとした
 宗教的自由の先駆者にして貴族
 カスパール・フォン・シュヴェンクフェルト

 ウエストファリア
 ミュンスター
 聖ランベルティ教会の尖塔の下で
 あなたは激しく嘔吐した

なんと立派なことか!
人間の形を保ちつづけるものよ
洪水を生き延びる
君たち
ひとツガイの男女

 箱船に同じく避難した夫婦は
 虚偽という男と
 不幸という女であった
 箱船のリーベスコムニスムス
 愛の共産主義
 
 デウカリオンひとりだけは
 その思慮の深さと信心深さのために生きながらえ
 最初の人類と二度目の人類をつなぐ環になりました

おお
なんたる思い出だ!
私の憤りのように巨大な夕日が沈んで行く
迫害者の足にキスを!