アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

冬の闘いが流した天使達の血
その霊的質量の総和に堪えきれない
春は
大地から浮遊する花々を噴出させるのだ

眠っている人間達の諦念
その霊的質量の総和に堪えきれない
私は
深夜ひとり歩く
桜の樹々の下を

ポケットに隠した
私の掌のなかで
生まれる前に死んだ宇宙が
天地創造の夢を見ている

暗い道の行方を花の雲が隠している
この湾曲した道には
喜びを苦しみに変える魔法がある

私の腕のなかで幕を閉じる
のどかなバロック風悲劇

桜の花びらのなかで風化していく世界
巨大化する太陽
朝は死んだまま生まれてくる