金色の雲の切れ端が人気の無い並木道の角に引っかかっていて、
ピアノの左手の音が聞こえた。
私は神様の大きな感情を捕まえたと思ったのだが、
本当は美しい女の人に唇を奪われただけだったのかも知れない。
知ってるわよ。
本当は殺して欲しいんでしょ。
殺せかし! 殺せかし! の人なんでしょ。
彼女の鞭は冬の風の音がした。
彼女の教養の分だけ鞭の切れ味が鋭かった。
私はこの痛みが永遠に続くように祈った。
しかし真珠母貝のなかに私の意識は遠のき、
肉体だけが破れたレコードのように傷の表面を反芻するのだった。
どこかで雪の融ける匂いがした。
春の光が血袋の裂け目に夥しい自我の残骸を曝していた。
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宇宙のマザー・コンプレックスは非難されなければならない。