アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

金色の光

金色の雲の切れ端が人気の無い並木道の角に引っかかっていて、
ピアノの左手の音が聞こえた。

私は神様の大きな感情を捕まえたと思ったのだが、
本当は美しい女の人に唇を奪われただけだったのかも知れない。

 知ってるわよ。
 本当は殺して欲しいんでしょ。
 殺せかし! 殺せかし! の人なんでしょ。

彼女の鞭は冬の風の音がした。
彼女の教養の分だけ鞭の切れ味が鋭かった。

私はこの痛みが永遠に続くように祈った。

しかし真珠母貝のなかに私の意識は遠のき、
肉体だけが破れたレコードのように傷の表面を反芻するのだった。

どこかで雪の融ける匂いがした。
春の光が血袋の裂け目に夥しい自我の残骸を曝していた。

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宇宙のマザー・コンプレックスは非難されなければならない。