アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

夫れ壓制せらるべき階級なく、 或階級の支配なく、 個人の生存競爭なきに至らば、國家と名くる壓制的權力も亦必要なからん

カール・マルクスと俱に所謂獨逸科學的社會主義の祖師と稱せられたるフリードリヒ・エンゲルス曰く、

『夫れ壓制せらるべき階級なく、
或階級の支配なく、
個人の生存競爭なきに至らば、國家と名くる壓制的權力も亦必要なからん、
而して之に代て起る者は、
社會全躰の代表者としての國家也然れども此國家や唯社會の名に於て生産の機關を有するに過ぎず、
唯此一事、
國家の最初の職務にして、
亦最後の職務也、
社會關係に於る國家の干渉は、
一層は一層より漸々無用となつて消滅するに至るべし』と

然り、
社會主義者が理想とする國家は唯だ如此きのみ、
彼等は決して國家萬能の主義に依って個人の自由を没却せんとする者に非ず、
而も亦全然社會の秩序を無視して、
其團結組織を破壊せしめんとするものに非ず、
要は多數人の幸蘄のみ、
平等の利﨟のみ、
世の社會主義を批評する者宜しく此點に留意せよ。

若し夫れ社會主義が立君政治と兩立するや否やは、
自ら別問題也

    幸徳秋水「社會主義神髄」ー附錄「社會主義と國家」