アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

大日本三千年紀研究會のためのメモ 「トーマス・ミュンツアー:ドイツ農民戦争と革命の神学」

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先にマルクス主義的アプローチと非マルクス主義的アプローチとの相違の具体的な一つの表れについて述べたが、この相違は、ミュンツアーに限らず、取り上げられる人間の主観的意図とその人間が演じた客観的な歴史的役割との食い違いが大きければ大きいほど顕著となる。

そして、このような食い違いは、社会的激動の時代に、自明性を失った既製の信仰にかえて、新しい信仰を自らの内面にうち立て、この信仰を実践した宗教改革のリーダー達には、多かれ少なかれ見られるのである。

ミュンツアーはもっとも典型的な例の一つにすぎない。

超越的な信仰原理といえども、ひとたび社会的実践に移されると、その運動は必然的に現実の利害状況とからみ合い、信仰原理は、それを提起した個人の意図とは別に、一定の社会勢力の利益を代表するイデオロギーとして機能せざるを得なくなるからである。

「トーマス・ミュンツアー:ドイツ農民戦争と革命の神学」 マンフレート・ベンジング、田中真造訳(未来社)所収、訳者による解説「ミュンツアー像の変遷」より