アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

ゴルギアス・カント・ヘーゲル 大日本三千年紀研究會のためのコラージュ集12

このようにゴルギアス弁証法は観念と存在のちがいに固執するものですが、このちがいはまさにカントによってふたたびとりあげられる。ちがいに固執するかぎり、いうまでもなく、存在するものの認識は不可能になります。

この弁証法は、感覚的存在を実在だと主張する人にとっては、たしかに克服不可能です。感覚的なものの真相は、このように運動しながら自分を否定していくところにあって、それを統一するのは思想なのです。

存在は存在としてとらえられるのではなく、それをとらえることは普遍化することです。「存在は伝達されない」ということばは字義通りに理解すべきで、この個物をことばにすることは不可能なのです。

感覚的意識のうちに普遍的なものがあるというだけでなく、存在のありかたが哲学的真理の表現に見あうものです。だとすれば、弁証法という普遍的な哲学を対象としたソフィストたちは、深遠な思想家だったのです。

 ヘーゲル哲学史講義」第二章 A ソフィストの哲学 2.ゴルギアス長谷川宏訳)