アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

    鏡のなかの身体論 

    1

個人の身体・精神と
社会有機体の病理が
映し合う
二枚の鏡のなかの
像のように
消滅点に向け
収束してゆく

病める自我と言う鏡を
太陽に向け
眩い反射光で
その青白い裸身を
照らしてみる

    2

若い病人が
窓辺のベッドに横たわって
小さな手鏡に
世界を映している

幼い私は
母の手鏡で
太陽を狙っている

    3

パーマをかけている母の傍らで
小さな手鏡を
鏡台に向けてみる

二枚の鏡の間に
世界は飲み込まれ

私はひとり
銀河の洪水に飲み込まれ

未生の海辺に流れ着いて
アルファベットのビスケットを食べながら
蜆貝の貝殻を拾っている