アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

シンガポール、ヒンズーの寺院にて

私が好きな
猿の顔をした神
コブラの姿をした神に
守護される
幼子クリシュナ
高い塔は
あらゆるインド古代説話の
エピソードを網羅する立体曼荼羅なのだが
神話の懐かしさと
おとぎの世界の郷愁が
幾千の神像たちに宿る
真言読経が響く神殿の床には
瞑想する男
結跏趺坐する
印を結ぶ
インドの男
歩む僧
御堂に鎮座する神は

漆黒の身体を真新しい衣にくるまれて
その尊顔の闇の色が
インドの神の古さと
宇宙遍在の証だ

私はもちろん
靴を脱ぎ
蛇口から流れる水に
色の黒いインド人の真似をして
足のほこりを洗い落とし
裸足のまま
寺院の門を潜ったのでありました。