アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

象のはな子


_____以下貼り付けます____


ゾウの「はな子」65歳に 戦後初来日、国内最高齢
2012年2月1日 12時02分
65歳を迎えたアジアゾウのはな子=東京都武蔵野市井の頭自然文化園で(同園提供)

 戦後初めて日本に来たアジアゾウで、井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)で飼育されている雌の「はな子」が今年、推定年齢六十五歳を迎えた。国内のゾウでは最高齢。歯が弱くなり、年老いたはな子を飼育係が餌を工夫して支えている。(高橋知子
 はな子は一九四九年、生まれ故郷のタイから日本に来た。当時、推定二歳半。名前は戦前、上野動物園にいた「花子」に由来する。当初は上野にいたが、五四年に井の頭へ。はな子を移動動物園で見た武蔵野、三鷹市民の強い要望だった。
 二年後、酔った男性がゾウ舎に入り込み、はな子に踏まれて死亡する事故が起きた。その二年後には飼育係も。はな子は半年間、脚を鎖につながれ自由を奪われた。
 ゾウの歯は通常四本だが、はな子の歯は若くして抜け落ち、今は一本しかない。「鎖につながれた時のストレスが原因と言われている」と飼育係の斉藤美和さん(28)は説明する。普通なら皮ごと食べられるバナナも、皮をむかないと食べられない。
 このため四人の飼育係が、消化がよく栄養価の高い餌を工夫。青草、リンゴ、ニンジンなどを機械にかけて団子状にするなど、一日の総量約八十キロを四回に分けて与えている。
 「はな子さん、持って来たよ」。斉藤さんが、ドクダミ茶などの入った特製ドリンク二十リットルをバケツに入れて置くと、器用に鼻で吸って口へ運び、あっという間に飲み干して、大好きな食パンをほおばった。
 半世紀以上を一頭で生きたはな子は、飼育係を仲間と思っているらしい。「人間の立ち話に鼻で割って入ったこともある」と斉藤さん。神経質な性格で物音に驚きやすいが、甘えん坊な面も。体を熊手でかいてもらうと、目を細めて喜ぶ。
 腹痛以外、これまで大きな病気はない。昔からゾウとしては小食で、体形が小さいことも長寿の一因とされる。
 斉藤さんは「ファンも多いので、いつまでも元気でいられるよう世話をしていきたい」と話している。五日午前十一時から、同園ゾウ舎前で六十五歳となったお祝い会が開かれ、武蔵野、三鷹両市長名の感謝状が贈られる。問い合わせは同園=電0422(46)1100=へ。
(東京新聞)

____以上貼り付け終了_____

昼飯を食べながら、
井の頭公園の象のはな子の記事を読んでいたら泣けて仕方が無くなり、
しまいには嗚咽しそうになって、
あわてた。
どうにかしている。
そのときには気づかなかったが、
宮沢賢治の「オツベルと象」の童話が心のなかにあったのかも知れない。
はな子の怒りの行方を考えると、
どうしても涙が止まらなかった。

「助けて下さい、サンタマリア」

しかし
はな子には
親も
仲間も
助けには来ない

怒りが絶望に
諦念に変わるとしたら

われわれは
はな子の後を追って、
とぼとぼと歩いているだけなのか。

はな子は
もう一度
人間を踏み殺す

何度も
何度も
憎しみを込めて

弱い人間を
力強い長い鼻で
たたきつぶす

それがおまえに与えられた
ただ一つのチャンスだった。

今度の人間は
おまえの大事な
一番大事な友達だった

その友達を
おまえは
何度でも
何度でも
踏みつぶす。

あのイヤな匂いのする
ふらふらした
赤い顔の
見知らぬ男

あのときは
ただ怖かっただけだ
近寄るな
そういうつもりで
長い鼻で
払いのけただけだった

男は
コンクリートの床にぶつかって
動かなくなった

おまえは
少し安心して
寝屋のわらの上で
大きなあくびをしたっけ。

一番大事なともだちを
踏み殺しても
おまえの故郷は戻らない

祭りのにぎやかな笛や太鼓を聞くこともない
はれやかに着飾って
祭りのパレードを
堂々と歩むこともできない。

本当はそんなことは覚えていない
けれど
おまえの大事な思い出なのだ。

「もうだめです、サンタマリア」
「人間が憎いです、サンタマリア」
「友達を殺しました、サンタマリア」
「私を罰して下さい、サンタマリア」

ある朝
鎖につながれた脚の間に
大きな牙を持った
黒い犬が現れて云った

「ばかだな、おまえは悪くない。自分じゃなくて、人間を憎め」

はな子の口から
赤い血が流れ
よだれが流れ
大きな歯が床に落ちて
どすんと音を立てた。

今夜も
はな子は
大きな骨壺のなかで
ひなたぼっこをしている
夢を見ている。