アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

「秘教的修行の手引き:エソテリックスクールより」 主要課題(1906年10月)その2

前回の続きです。

主要課題(2)
    (明治三十九年十月)

これを五分間行った後、神秘学徒は次の段階に移る。
穏やかな、しかし力強い呼吸を行う。息を吸い、同じように穏やかに、しかし力強く息を吐く。ここで吸気と呼気の間に間合いを置かないこと。次に、少しの間、呼吸を止めるが、その間、息が完全に体外に留まっているように努める。以下はおおよその見当である。吸う息にかける時間は、各々の能力に応じて任意で良い。吐く息の時間は吸う息の時間の倍にし、呼吸を止める時間は、吸う息にかける時間の三倍にする。例えば、もし吸う息に二秒要するとすれば、吐く息には四秒、呼吸を止める時間は六秒になる。この吸気、呼気、停止を四回繰り返す。吸気と呼気の間、あらゆる想念を排除し、意識全体を呼吸に向ける。しかし、第一番目の呼吸の停止の間、神秘学徒は、眉の間の少し後方、脳の前部、鼻筋の付け根あたりに集中する一方、意識には以下の言葉のみを満たすこと。

「私が存在する」

二回目の呼吸の停止の間、喉仏の内部に集中する一方、意識は以下のイメージのみで満たす。

「それが思考する」

三番目の呼吸の停止の間、両腕と両手に集中する。両手は組むか、左手の上に右手を乗せる。同時に、意識には、以下のイメージのみを満たす。

「彼女が感覚する」

四番目の呼吸の停止の間、身体全体の表面に集中する。すなわち、可能な限りの明瞭さをもって自分自身の身体を視覚化し、意識を以下のイメージで満たす。

「彼が意志する」

もしこれらの行を数週間の間、精力的に行うことが出来れば、意識を集中している箇所に何かが感じられるようになるであろう。すなわち、鼻筋の付け根辺り、喉仏、両手と両腕の流れ、そして、身体全体の表面である。
両腕と両手への集中の間、あたかも何かの力が両手を引き離そうとしているかのように感じるであろう。力の線に従って、その通りにしても良いが、自分でそうする必要は無い。その感覚は、自ずから生ずるのであるから。

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余談ですが、エソテリックスクールは、シュタイナーが彼自身の人智学協会を設立する以前、神智学協会に属していた頃に開かれていました。「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」には、ここで訳出している講義に対応する記述は見られますが、呼吸法には触れていません。呼吸法を用いた行は進展が早い代わりに危険もあるためです。この前のシリーズで訳を記録した、「八正道」に相当する一週間の課題に見られるような、自己を制御する行の併用が不可欠だと思われます。ここでは私自身のために訳出していますが、人智学的な修行に取り組むことを考えている方は、あくまでも、「金曜日の課題」の記事で紹介したシュタイナーの基本図書を第一に参照して下さい。行の持つ危険性に関して無知なまま効果的な修行の世界に飛び込むことは、「オーム真理教」等々の悲劇を繰り返す恐れがあると思います。生意気なことを書いて申しわけありません。