- 作者: 徳本栄一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/02
- メディア: 単行本
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最近感想を書いた上の本に続いて、徳本栄一郎の以下の本も数週間前に読み終えた。
- 作者: 徳本栄一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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徳本によれば、チャーチルも、ルーズベルトも、トルーマンも、そしてマッカーサーも、フリーメイソンであった。徳川幕府に開国を迫ったペリーもメイソンであり、敗戦国日本を占領するために厚木基地に降り立ったマッカーサーを迎えたのは、ペリー当時の十三連の星を戴く合衆国国旗だった。占領下日本では、天皇陛下をメイソンにしようとする動きさえあったことが明かされる。
一方、開戦時日本では、大川周明が「アングロサクソン世界幕府打倒」を掲げて大東亜戦争を鼓舞するラジオ放送を行っていた。
私は、浪人生の頃だったと思うが、以下の本も読んで、おそらく、長い間、漠然とその呪縛の下にいたようだ。岩波文化に代表される戦後史観とは、要するに、戦前・戦中に弾圧され、さんざんひどい目にあった左翼的思想家たちが、戦後になってその恨みをはらしている構図とでも云えば、一面的に過ぎるだろうか。しかし、岩波文化的な戦後史観自体の一面性が、巡りめぐって、今の高校生の世界史・日本史における戦前の日本の歴史の扱いにも如実に表れていると思う。「チャート式」世界史・日本史を愛読している私には、そのように思えてならない。井上清の本で、私が唯一記憶していることは、「昭和天皇はアレクサンダー大王を尊敬しており、世界征服の妄想に取り憑かれていた」と言う意味の記述だった。もう、何十年も前の話だが、こういう一言が、若い批判力の無い頭脳には影響力を持っていたのだ。今、徳本の実証性と、井上の観念性を闘わせてみることは面白いので、とうの昔に売り払ってしまった井上清であったが、もう一度読み返したい気がしてきた。
- 作者: 井上清
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/02/17
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一方、在野の思想家・関曠野も、以下の著書で皇室と天皇に関する実に興味深い考察を展開している。これについては、別の機会に論じたいが、雑誌「現代思想」にこのような自衛隊観、皇室観、天皇観、戦後史観が発表されていたとは知らなかった。いわゆる「右翼」の人が読んでも、感動する部分があるに違いない。「オカルト史観」の私でさえ、こういう言い方、見方があるかと感心せざるを得なかった。現実を見るとは、こういうことだろう。未だ、最後の方のベーシックインカムに関するアポリアについては未読だ。しかし、関の「岩波文化的戦後史観・東京裁判史観」からの脱却のきっかけが、911以降のアメリカのイラクに対する態度に占領下日本を見たことであったのは、全くその通りで、まともな、曇らない眼を持った日本人なら、そう思わざるを得なかったはずだ。
- 作者: 関曠野
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2011/09/23
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そして、少し飛躍するが、今、以下の本を読み終えるところである。
- 作者: スティーブンナイト,岸本完司
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1990/05
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また、これは徳本(1945日本占領)によるが、米国でも、メイソンは基本的に白人のもので、黒人のメイソンはあり得ない。しかし、(旧)植民地において、その支配層をメーソンに加入させることは重要な活動の一環であり、例えばアメリカの旧植民地フィリピンの上流階級にはメイソンが多いらしい。つまり、メーソンは、大川周明の云うアングロサクソン世界幕府、即ち、白人帝国主義のイデオロギーでもあり、また、支配地・上層階級懐柔の手段でもあったのだというのが、現在の私の作業仮説である。もちろん、一般の低い地位のメーソンにとって、それは、せいぜい、相互扶助団体、福祉団体、親睦団体以上のなにものでもないだろう。しかし、以下のナイトの本にもあるように、高位のメーソンは国際的な交流を持ち、更に、独自の異教的な信仰に染まっていることは確からしい。
マンリー・パルマ−・ホールは、32位階以上(最高位は33)の高位メーソンだったが、戦中に、オカルト国粋主義とでも云うべき"The Secret Destiny of America"(アメリカの秘密の運命)等を書いて、「アメリカ流民主主義」が、古代エジプトに遡る根拠と世界制覇の使命を持つのだ、という主張を広めていた。 そして、トルーマン大統領の執務室には、この本が置いてあったそうだ。一方の戦前日本の右翼思想家たちも、ことごとく仏教神秘主義とでもいうべき実践的な神秘家の側面を持っていたことを指摘しておきたい。日米開戦は、当然のことながら、決して帝国主義だけの問題ではなかった。シュタイナーも生前に予測していた、避け得ない東西の霊性の対決という側面も確かにあったはずだ。
スティーブン・ナイトの本書によれば、イギリスがいかにメイソンに浸食された国であるかが分かる。特に、カンタベリー大司教(イギリス国教の長)がメーソンである場合があることなどは、イギリス人自身にも重大な問題であろう。ナイトは、上位メーソンにしか明かされない彼らの崇める神の名前の問題にまで肉薄する(第二十三章・悪魔信仰説を追って)。それは、旧約時代に邪神として退けられたバール神、エジプトのオシリス神、そしてエホバをつぎあわせたような名前であった。ちなみに、ナイトは、切り裂きジャック事件にメーソンが関わったという本も書いて、エジプトのオシリス神話にまつわるメーソン儀礼に則った猟奇事件としている。イギリス皇室のスキャンダルを隠蔽するために高位のメーソンであった当時の司法官が関与した結果であるとしている。
ナイトは、本書を上梓した数年後、三十代の若さで亡くなっている。本書は基本的にイギリス国内のメーソンの動向を追ったものであったが、読者としては、国際的なメーソンの在り方を同様な実証的な手法で追った調査結果が知りたかった。大変残念なことである。メーソンがらみは不審死が多いようだ。