アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

大江健三郎 の想像力による放射能汚染後の世界と「孫正義」の出現 (治療塔・正義の改造人間) 

昨夜は、COCO'Sで、「近未来SF・治療塔」(大江健三郎岩波書店・1990年)を読む。
この作品は、1989年から90年にかけて、バブル崩壊前の日本らしい、岩波としては贅沢な雑誌だった「ヘルメス」(値段が高かったせいで私は買わなかった)に連載された。原発事故と中東紛争に端を発する世界的核戦争によって放射能汚染された世界が舞台。1986年1月29日には、スペースシャトルチェレンジャー号が打ち上げから73秒後、まだ見物人の視界から消え去る前に空中爆発し、日系人のオニヅカ飛行士も殉職した。
同年、4月26日はチェルノブイリ原発の事故が起きている。これらの黙示録的な出来事を目撃した同時代人、大江は、彼らしい責任感で、科学技術と人類の運命を帰国子女「リッチャン」を語り手として描く。大江も好きだったと思われるタルコフスキーSF映画惑星ソラリス、ストーカー)の影響・雰囲気も十分にある。人類が宇宙空間に出ることで、なにか超越的な力をもった不可思議な惑星に出遭うというプロット、死者が帰還する宇宙船に乗って帰ってくるかも知れないと期待する老婆のことば、葛(くず)の生い茂った廃墟と化したロケット基地などに、それらが濃厚だ。この小説を、しかし、現実に放射能汚染が進行しつつある2011年の日本で読むのは、少しばかり胸がどきどきする作業である。黒澤映画「夢」もそうだったが、やはり、芸術家の感性の方が、数字をあげつらう「専門家」の分析や予測よりも、先を読む力を持っている。今でも専門家(思想の専門家、思想家なんていうものもある)が幅を利かす世界であるが、直観力・想像力の欠如した知性の濫用(ある種のテレビ文化人においては悪用)はもはや一般人にとっては迷惑の域に達しつつある。旧約聖書の時代に活躍した「神の人」や「預言者」の役割は、今の時代では、芸術家が担うほかに無い。
孫氏が正義の人として立ち上がったようだ(下方に引用)。人びとが(私も含めて)ヒツジのようにおとなしく、無為の人・管総理が居座り続ける現実を前にして、一資本家が日本人を滅亡の危機から救おうと立ち上がる。これはまさしく予想外の展開だ。放射能汚染によって本土にひとが住めなくなっては、彼のビジネスも成り立たないという現実的な読みも出来るが、それだけでは無いと思う。在日韓国人として、人知れず苦労した人間のなかから、彼のような熱い人物が現れるのは、必然かも知れない。金も力もない一日本人としては、「格好良すぎるぜ」というやっかみももちろん無いわけではないが。
気がかりなのは、大江による預言的な「治療塔」では、韓国における混乱を収拾した大統領が、実は改造人間(たこ人間!)であることが人びとにばれて、旧約時代の「石打ちの刑」のように惨殺されてしまうというエピソードである。超人的な有能さを発揮して韓国を「大出発」後の混乱から救った大統領は、「選ばれた者たち」の密通者を疑われてか、「残された者」たちに殺されてしまう。その悲劇的な韓国大統領の二項的な有り様が、不思議に孫氏と重なるのだ。われわれが、惑わされない理性とささやかな勇気を発揮することで、良いものは良い、悪いものは悪いという判断を過たないことを祈る。彼が「旧勢力」と今後どのような関係になっていくのか、見守りたいと思う。田中龍作の危惧するような激しいマスコミによるネガティブ・キャンペーンが進むのだろうか。

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自然エネルギーの普及阻む勢力と戦う孫正義

孫氏は原発の是非を有権者に問う「原発国民投票」も提案している。(22日、ソフトバンク本社。写真:筆者撮影)

 「通信の自由化」に業績を残した男が今度は「エネルギーの自由化」を目指す。津波被災者のために100億円を寄付したソフトバンク孫正義社長は「自然エネルギー財団」を近く創設する。

 チェルノブイリと並んで世界原子力史上最悪となった東京電力・福島原子力発電所の事故は、環境破壊にとどまらず日本経済をもドン底に突き落としかねない。

 東京電力は国民を不安にさせないために誰もが納得する情報を開示する義務がある。だが過去の度重なる「事故隠し」「データ改ざん」が象徴するように、東電は事実を表に出さないことを“モットー”とする。多額の広告費や接待で飼いならされた記者クラブメディア(新聞・テレビ)は、東電の隠ぺいに手を貸してきた。

 情報開示の窓口となるはずの東電記者会見でもしインターネットがなかったら、これまで同様国民は真相を知らされないままだっただろう。

 記者会見で威力を発揮しているのがU-STREAMだ。ご存知ソフトバンクが手がける情報ツールである。USTはフリーランスが追及する「中国接待旅行」、「事故のディテール」など東電が隠したがっていることを伝えてきた。記者クラブメディアが黙殺してきたことばかりだ。

 東電福島原発事故の真相究明にUSTつまりソフトバンクが果たした役割は大きい。「情報革命にわき目を振らずに来た」と話す孫氏は、この一か月間悩んできたという。原発は必要か止めるべきか、で。

 エネルギー問題に首っぴきで取り組んだ結果、「今、日本人を不幸にしているのが原発問題」、「批判ばかりしていてもしょうがない」として「自然エネルギー財団」を立ち上げることを決めた。

 アメリカでは昨年から太陽光による発電コストが原子力発電を下回るようになった。孫氏は世界中の科学者100人を集めて太陽光発電を中心に自然エネルギーの普及を目指す。

 米国に踊らされた日本政府は国策として原子力発電を進めてきた。これほどの大事故を招いていながらその姿勢を変える気配はない。

 「自民党電気事業連合会の言いなり、民主党は電力総連に骨抜き。メディアは電力会社から広告漬け。(そうしたなか)自然エネルギー計画をどう着地させるのか?」、ジャーナリストの上杉隆氏が質問した。

 孫氏は「原発は国民の一番の関心事。啓蒙してゆくこと。これが王道」と答えた。

 心配症の筆者は、原発に反対していた佐藤栄佐久・前福島県知事に孫氏が重なる。佐藤前知事の逮捕容疑は収賄だが、佐藤氏自身「原発反対も逮捕理由のひとつ」(18日、日本外国特派員協会)と捉えているのである。

 政権はあらゆる規制を駆使して自然ネルギーの普及を妨害してくるだろう。マスコミは孫氏を絡めてネガティブキャンペーンを張ってくるだろう。

 筆者は上記(「佐藤前知事」「政権による妨害」「マスコミのネガキャン」)を説明したうえで孫氏に「具体的に対抗策を考えているのか?」と聞いた。

 孫氏は「損害を被ることもあるが、それでも正義を通さなければならない時がある」と決意を示した。

 既得権益を打破しようとすると政権、霞が関記者クラブメディアが立ちはだかる。その繰り返しだった。だが原発は日本が吹き飛ぶほどの危険性を持つ。「子供たちのためにも日本を残さなければならない」とする孫氏に孤軍奮闘を強いてはならない。

◇田中龍作の取材は読者に支えられています。
       
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