アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

欲望

S博士によれば、特定の欲望が特定の臓器に関わるという。なるほど、考えてみれば、脳の欲望、眼の欲望、脚の欲望もある。生殖器や消化器の欲望だけでは無く。通常の意識がそれらを意識化できないだけなのだ。愛の欲望は高次の身体における心臓付近の「器官」に関係しているに違いない。
  
音楽は耳の欲望が生み出したものか? 

丁度プロメテウスの兄弟である巨人アトラスが大地を負うようにして一つ一つの小さな波の山をその背に担う
自動反転砂時計の幻

時間の神の通り道に落とし穴を掘って待っていると言う老人
不老不死の妙手はこれしか無いと信じている
菫色の時間
そして老人の罠に落ちる(わたしたち)
それ以来時間が進んだという話を聞かなくなったでしょう? 
この世界には今だけがある
不老不死の世界が広がっていく
古い染みのように

わたしは生まれた
そして胃カメラを飲んだ
感情とは縁の無い純粋に生理的な涙が流れ出す
(滂沱と)
卵を産むウミガメの涙
自己の「内面」に触れる異物への生理的反応
無感情の涙を流しながら
管状の生き物としての自己の内側を巡る
三分間の旅
(或いは自己の隠された外側を巡る)

未知の自己の外壁は怪しげなピンク色にヌメヌメと蠢動し絶えず濡れているのだった
すなわち恩寵によって幾何学的反転を遂げたわたしはあのような淫靡極まり無い外貌の怪物なのであった

薄明に屹立する