アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

ヒュポテシス(古伝梗概) 第三稿

詩が個人の肉体と同じくらいつつましやかで
それにもかかわらず
(人間の肉体同様に)
宇宙全体に匹敵するという
両極性を貫く一本の棒が私である

繰り返し見てきた魚の夢
しかしどこか傷ついているらしく
魚たちが巨大化している
幾億万のキリストの群れ
私にはその背びれしか見ることができない
なにか重大な過誤があるらしく
慰めがない

現在を歴史化することは
逃避なのか? 
現在を回想することは? 
死者の眼で今を見ることは? 
既に死んだ自分を認めることは?

私は以前の私では無い
そのことを認めれば良いだけかも知れない
(世界中の)
過去現在未来の人たちが知っていて
私が知らなかったことを知った
あらゆる古典の中心にあるものを体験してしまったのだ
そして動き出すことができない
世界という悲劇の中心から

すべての古典は悲劇の練習にすぎない
それを自らが体験するまでの
悲劇の本質に密儀を見出しうる
自らが力を蓄えるまでの

あらゆる音楽は過ぎ去ったものである
過ぎ去った密儀の余韻
決して思い出せない
しかし覚えているもの

私はラブレターを出し続ける男だった
(そして必ず来る)
返事を一度も開封したことがない
それでもラブレターを出し続ける
それ以外に生きることの継続はありえないのだ

(私の自我の身体は)
ベートーヴェン「七重奏曲」変ホ長調を聴く
少なくとも音楽にとって死は無意味である?
死の内実には星が詰まっている!