アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

声(第三稿)

「声がする。あなたの弟の血が大地からわたしに叫んでいる。」

この一日に終わりは来ないだろう
陽は垂直に上昇し再び帰らないだろう
夜明けはばら色の栄光を返上するだろう
日も月も年も円環の巡りを放棄するだろう

もう肩車もできない
ぼくは
こどもたちが怖がらないように
そっと後ろから近づく

血が燃える音がする
ぼくの頸動脈から
宇宙が漏れ出す音が聞こえる
砂漠に降り注ぐ
流れ星の歌う声が

「おまえの弟はどこにいるのか?」

  *
 
首の無い天使が
愛を願わなくなった
ぼくの肩にそっと手を置く