ブルジョアジーが政権を握つたところでは、
すべての封建的、
主従的、
牧歌的なる諸関係が破壊された。
人をその生まれながらの目上と結びつけてゐた封建的の色彩は無残に引きちぎられて、
人と人とを結びつけるものは、
ただ赤裸々の利益、
冷酷な現金勘定より外には何ものもないことになつた。
宗繁的の熱情や、
武士的の感激や、
町家的の人情などいふ神聖な渇仰心は、
氷のやうに冷たい主我的な打算の中に溺らされてしまつた。
個々の人物の値打は交換価値の中に消え去り、
永く確保された無数の特許的自由の代りに、
ただ一つの無茶な商業的自由が設立された。
これを一言にすれば、
ブルジョアジーは、
宗繁的及び政治的の幻想を以て覆はれた搾取の代りに、
公然たる恥知らずの直接な露骨な搾取を設定したのである。
☆
ブルジョアジーは、
従来名誉と尊敬とを博してゐたすべての職業から、
その後光を剥ぎ去つてしまつた。
医師も、
法律家も、
僧侶も、
詩人も、
學者も、
皆彼等に雇はれる賃金労働者に変化されてしまつた。
ブルジョアジーは、
家族関係からそのしほらしいセンチメンタルなヴェールを破り去つて、
純然たる一個の金銭関係に引き戻してしまつた。
☆
近世国家の政府なるものは、
ブルジョア階級全体のためにその共同事務を処理する委員会に過ぎない。