アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

神はいない
神はいなあい
神はいなああい
神はいなあああい
神はいなあああああい
神はいいいいいいいいいなあああい

蝉の無神論は雄弁だ
私は思わず耳を傾ける

神はいない
神はいなああい

地中で五年間考え抜いた結論である

神はいなあああい
神はいませええええええん

固い乾いた背中が
静かに裂けるとき

蝉は沈黙している
しかし白い肌は雄弁だ
私はその誘惑を退けることができない

神はいなあい
神はいなあああい
神はどこにも
いなあああああああい

大きな朝焼けのなかで
赤い大きな日の光のなかで
蝉は沈黙する
その目玉は明るく輝く
細い手足に力がこもる


神は
神は
神は

ミー
ミー
ミー
ミー
みい。

羽ばたくときがきた
透明なはねを
しずかに震わせながら
蝉はひょいと
声のなかに
明るい光のなかに

蝉は
蝉は
私の絶望の抜け殻に小便をかけて飛び去る