中世荘園領主の刑罰とは、領内に発生した犯罪をケガレとし、その災気を除去して正常な状態への回復につとめることであった。ここでは犯人に対する刑罰の意識は極めて希薄であり、こうした処置は、罪と穢(ケガレ)と禍を同一視する古代の観念や、記紀神話におけるスサノオノミコトの追放にみられるような穢と禍の除去の手段からみて、おそらく古代に淵源をもつ観念・処置と考えられる。
この荘園世界では、律令国家の整然とした刑罰体系にもとづく刑罰のあり方の影響はほとんどみられず、こうした観念は、律令国家をくぐりぬけ、変化しつつも中世まで生き続けていた。
中世荘園世界では、古代と同じく、人の犯した罪そのものよりも、人の犯した罪の災気が問題だった。