アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

野生のおじさんの行方

高橋先生は、最近、浅川マキにはまっているそうだ。CDを集めて、悦に入っている。
「浅川マキ、日本のビリー・ホリデイみたいな歌手ですね」
「ビリーホリデイが好きだったんです。山下洋輔と一緒のCDもあるんです」
「なるほど。山下はビリーホリデイの伴奏者だったマル・ウォルドロンとも親しかったでしょうし」
「浅川マキは、一生、アングラだったんです。アングラというのは、底辺と云うことなんです。底辺にいると、だれとでも連帯出来るんです」
昨年先生とお話しして別れ際に、「わたしは一生よこよこですから」と云って、にこっと笑われたことも思い出す。自分のような、縦社会のはぐれ者には、どこか、痛みなしには受け止めることの出来ない、うらやましい人生観だ。しかし、今からでも遅くはないだろう。近頃、子供に、野生のおじさんと同じ臭いがすると云われた私だ。すでに半分くらいは、野生化し始めたのかも知れない。もっともっと野生化し、人語を解する謎の生命体くらいのところまでいかないと駄目だ。「放射能怪人関東に現る」だ。