アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

ベクレルだけでは食品等の放射能毒性の判断が出来ないので、ICRPによる核種別摂取上限値(ALI 値)を参考にしてみると、 やはり大いに警戒が必要だという結論になる。

一時期問題になった飲み水だけはなく、食べ物も放射能汚染が報告されるようになりました。特に海産物の汚染は、食物連鎖を考えると心配になります。
私は、先日の谷山浩子コンサートの帰り、新装なった上野駅構内のお寿司屋さんで、握りを頬張りながらも、このホタテも放射能汚染されているんじゃないかと気になりました。しかし、食欲には勝てず、おいしく平らげてしまいました。
自分はそれでいいが、他の人のためにも、ここでもう少しまじめに考えてみよう。
手元にある、"CRC Handbook of Chemistry and Physics, 88th edition, 2007-2008"の中に、ICRP(International Commission on Radiological Protection 放射線防護に関する国際評議会)による1990年の年間摂取上限の推奨値というものを見つけたので、貼り付けておきます。これは、原発や、燃料施設や、処分施設などの労働者のための指標値なので、年間20mSv(ミリシーベルト)相当の値です。従って、年間1mSvの上限値を目標にするなら、この値を20で割ればよいわけです。ちなみに、ALIは、Annual Limits on oral and inhalation Intakes(呼吸および経口摂取の年間上限値)の略です。
この表を見ると、核種のよる放射能毒性の違いが明確に分かります。

以下の表で、
Inhalation intakesが、呼吸による一年間の摂取上限で、Bqのところがベクレル単位による値です。
Oral Intakesが、食事などによる経口摂取上限です。
Physical half-timeが半減期で、dは日、yは年。
Chemical form TYpe/f1の欄、Fは10分で90%が血中に吸収される吸収の速いもの、Mはそれが150日、Sでは7000日です。詳しいことは英文ですが表1の説明に書いてあります。表はこのままでは見にくいのですが、ダブルクリックで拡大して見やすくなります。



表1



表2



表3



表4

例えば、劣化ウラン弾の主成分と思われる238U(表4)では、ALI(Inhalation intakes)が 3.4E+04とありますが、これは、3.4×10000の意味です。一方で、3H(表1)では、ALI(Inhalation intakes)が1.1E+13とありますが、これは1.3×10000000000000の意味です。従って、238Uの毒性は、トリチウム3Hの1000000000倍と云う意味になります。ALI値が小さいほど、毒性は強い。劣化ウラン弾によるとしか考えられないイタリア人軍人の白血病の多発が田中龍作の今日のレポートにあります。

気になる同位体は、ストロンチウム( Sr 表2) 、ヨウ素( I 表2、表3)、セシウム( Cs 表3 )、プルトニウム(Pu 表4)、トリウム(Th 表3)、ウラン(U 表3、表4)、テクネチウム(Tc 表2)等でしょうか。これらでは、だいたい、100000〜100000000で推移しています。

そこで、具体例を一つ。
食品の放射能汚染のデータのサイトから、鮎を例にしてみます。
放射性セシウム(2900Bq/kg)
放射性ヨウ素(13Bq/kg)
が検出されています。
表3のCsのデータから、1.0E+6 (=1.0×1000000)以下が望ましい。しかし、これは原子力労働者の20mSvの場合なので、一般の大人の年間値である1mSvなら2桁下がって5.0E+4以下にしたい。つまり、50000/2900=17kg。
毎日食べる放射能汚染食品のうち鮎だけを勘定している仮定ですが、年間の上限が、17kg。
しかし、毎日鮎を食べたとしたら、上限は、17000/365=46gで、鮎を毎日1匹食べたとすると、それだけで、危ない事になる。従って、やはり、汚染の酷そうなものは、出来るだけ避けるべきだという結論になる。
決して、何を食べていても安全と云うことにはなりそうにもないですね。 

私は浪人生の頃、土本典明監督の水俣病のドキュメンタリーを岩波ホールに通って見ていました。この計算結果を眺めると、漁師さんや、海沿い、川沿いで海産物、魚介類をたくさん食べる人が、障害を起こす可能性は否定できない。第二の水俣病のような悲劇が起きないとも限らない。政府は安全だと云うが、やはり、放射能汚染値を絶えず気にして食物を取る方が良さそうだ。

ついでに、ラジウム(Ra 表3)もこうして眺めてみると、ALIが低く、摂取した場合の放射農毒性がバカにならないことになりますが、どう考えるべきでしょう。ラジウム温泉で、ラジウムを直接摂取するわけではないから問題が無いのか。