アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

細い月  週刊新潮(4/14号)を読む

昼飯にチムニーでスパゲティ・Aランチを食べ、週刊新潮(4/14号)を読む。グラビアは、月光下で長時間露出した被災地の夜の写真だった。黒い津波に乗って街にやってきた艦船も、二度と海に帰ることはできない。月光に照らし出された廃墟を睥睨するその巨体が、ゴシックの大伽藍のようにも思え、ひと目見に行きたい衝動に駆られるが、許されることではない。ここに束の間出現した美は、しかし、深い鎮魂の気持ちに満たされた美だ。
昼間の被災地の写真は、大友克洋の「童夢」の細密なペン画の通りだと思う。超能力者の老人と子供の闘いによって破壊し尽くされる団地や街の壊れ方が、爆風で吹き飛ばされたかのようなビルや病院や学校の建物の示す津波の威力と重なってしまうのだ。死ななかったものが勝手な感傷にふける。
津波が引き裂いた家族の物語」という記事は、涙を拭いつつ読んでいったが、嗚咽しそうになったので、最後まで読めなかった。このような記事を読んで、だからどうすると言うことでもない。ただ感傷に浸る。今はただ、同胞たちの過酷な体験に思いを馳せ、悪夢にうなされる。