アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

漏洩放射能の正体:セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、等の放射性同位体が生成するのは何故か? 原子力発電の基礎過程としての核分裂反応の仕組み

福島第一原発事故の現状を理解し、今後の身の振り方を考えるために役に立つと思われる原理的な基礎事項を少しずつまとめて行く。放射能情報を曲解して悪い方に誇張する傾向もあるし、一方で安全の強調もあり、いったい何が真実なのか、大いに困惑している人も多いだろう。私も困惑している。

今日はどうも調子が悪く、とりあえず、書いておいて、後で又訂正加筆する方針にしたい。この問題のプレグナントな点(妊娠点)が見付からないのだ。羅列的に、重いファイルをともかくアップロードしておけば、あとの作業も楽だろう。まず、KEK高エネルギー加速器研究機構)が継続的に公表している大気中における放射性核種の測定結果を見てみよう。特に一番測定値が高かった3月15日のものを以下に示す(以下の図はダブルクリックで拡大して見やすくなります)。

ここで、測定された核種(放射性同位体)は、ヨウ素-131とか、テルル-132とか表現されている。先に書いたように、原子は重い原子核の周りを軽い電子が回っている。その原子核は複数の陽子と中性子が超強力に結合して出来ている。ここで、131とか、132とかは、質量数というもので、これらの元素の原子核1個の中に含まれる陽子の数と中性子の数の和である。

 質量数 = 陽子の数 + 中性子の数  (1)

陽子は+(プラス)電荷をもつが、中性子は文字通り電気的に中性で、電荷を持たない。ヨウ素では、陽子の数は53個なので、ヨウ素-131の原子核における中性子の数は78個である。電子1個はー(マイナス)の電荷をもち、陽子1個の電荷に釣り合う。又、原子では、陽子の数と電子の数が等しいので、結果的に中性になる。一方、表には、ヨウ素-133と言うものもある。この場合、陽子の数は53個のままなのだが、中性子が先ほどのものよりも2個多く、80個ある。このように、同じ元素(陽子の数が同じ)でも、中性子の数が異なるものが存在し、同位体と呼ぶ。この同位体で、特に放射性をもつものを放射性同位体と呼ぶ。又、陽子の数を原子番号と呼ぶ。

 原子番号 = 陽子の数   (2)

ここで、元素とは、水素、炭素、ケイ素、銅、ウラン、などなどの物質の純一性の単位であるが、それらの元素の原子番号が水素では1,炭素では6、等々で、今述べたように、それらの根本的な違いは、陽子数=原子番号の違いである。これらを下記のように原子番号順にテーブルにして並べると、各元素の性質の周期性が説明できることに、ロシアのメンデレーエフが気がついた。

ここで、縦の列に並ぶ元素はお互いにその化学的な性質が似ている。例えば、今問題のストロンチウム(Sr)は原子番号が38で、原子番号が20のカルシウム(Ca)の真下にある。そこで、ストロンチウムがカルシウムと”間違われて”骨の中に蓄積される危険性が心配されることになる。又、この表で、原子番号83のビスマス(Bi)よりも大きい原子番号の元素はすべて放射性元素になる。

KEKによる測定データの推移を下に追加しておく。

3/15-16と3/20-23に測定値が高かったが、その後は1/100程度に落ちていることが分かる。ここで、ある人がある期間に呼吸した空気の体積をV(立方センチメートル)とすると(正確には積分ですが、大雑把に)、

 呼吸による放射性物質摂取量 = 測定値の和 × V   (3)

Vが幾らくらいかはよく分からないので、仮に、この高濃度期間に10立方メートルの空気を吸ったとして、上のグラフの積算値を12/100000(ベクレル/立方センチメートル)とすれば、おおざっぱな計算ですが、

12/100000×10000000=1200ベクレル

になるが、これは多めの見積もりだと思う。Vをまじめに見積もる必要があるだろう。

本題の原子力発電の根本原理である核分裂の話題に移る。下の図は、各元素の原子核内の核子(陽子と中性子の総称)の結合力をグラフにしたものである。28番ニッケル(Ni)と26番の鉄(Fe)が結合力が強く(地球の核を形成している)安定な核で、一方、質量数が230台の重い核であるウラン(U)等は、鉄に比べると結合力が弱いことが分かる。

1930年代、チャドウィックが1932年に発見した中性子原子番号92のウラン(U)に照射すると、なぜか原子番号56のバリウム(Ba)が生成することが、ドイツのハーンとシュトラースマンによって発見され、その一週間後に、これは核分裂が起きたと彼らは悟る。以下の図を参照。

詳細は後日に譲るが、ここで、入射した中性子1個に対して、生成する中性子が2個であることがポイントである。

下の図は、ウラン235の核分裂反応の結果生成される核種の分布です。横軸は質量数で、縦軸が、生成物の相対的な収量です。色々な核分裂の仕方があることが分かります。しかも、ピークがふたつできますね。この理由は現在も謎だそうです。

上の図と、高エネ研のデータを比べると、質量数130番台の同位体の起源が核分裂であることが納得できます。テクネチウム99も左のピークにあります。

今日はこの辺で。続きは後日書き足すことにします。