アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

音樂(八月の再録)

夜更けになると音樂が美しく聞こえるようになるのは何故だろう
もはやぼくたちには星さえ残されていないのに
眠ることが許されない夜

神様の宿題を
思い出すまでは
眠ってはいけない

蜻蛉の羽の生えたエンゼルが

眠りに落ちた私のかわりに思い出す
死んだ女のことを

眠る私は
不義の彼方で
愉快に波乗りをする
倫理の彼方で
軽快に踊り出す

そのとき
蜻蛉の羽の生えたエンゼルは
赤ん坊の顔で
眠る私に乳臭い息を吹きかけるが

眠る私は
蓮の花の上で
ウクレレの演奏に熱中している

  *

夜明けが来る前に
夥しい死が
蝶のように飛び立つ

私は眠ったまま
直立不動の朝に敬礼する