アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

夢魔(第三稿)

マルキオンは死なない
夢魔

君の脳髄をストローで吸いたい
そのときぼくの頭上に広がる君の歌声
それは青空を満たすほどに

失われた天国である物の裏側
影こそが美しい
もどかしげな愛の手つき
そしてぼくの掌を覆う十字架
それは神秘家の徴である

マルキオンは死なない

 彼らが死人の中からよみがえるときには
 めとったり
 とついだりすることはない
 彼らは天にいる御使いのようなものである
 神は死んだ者の神ではなく
 生きている者の神である

肉欲を司る女神
その長い裳裾を引き摺る音

「最も美しい女性へ」
夢魔は黄金の林檎を投げる
背教の環を逃げていく影

マルキオンは死なない

ぼくの脳髄に刺されたストローを吸う
その人