アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

鯨(七月八日の改稿 短縮版)

共謀罪で目の前の人間が警官に連れ去られていく現場を見た。発言の内容に引っかかるものがあったのである。警官がそれを具体的に指摘したとき、彼は「しまった!」という顔をしたが、直ぐに警官に従って去って行った。しかしそれが「凍った鯨の夢」とどう繋がっていたのか。

「凍った鯨の夢」の同行者が彼だったのだろうか。そのとき私には話し相手がいたのだが、その姿は無かった。存在だけがあった。それが存在というものなのだ(ということを夢が教えたのかもしれない)。 つまり私は存在している!と言うことだ。それは私が一番知りたかったことだった(私が私と言えば、それは私のことであるが、この夢のなかの私は私ではないことに注意を喚起しておこう)。

私たちは大勢でどこかに向かっている(考えてみるとそれは徒歩の遠足であった)。暗い街道沿いに巨大な三角形の木造建築があって、それは九龍城の一部のような風格を備えた廃墟寸前の建物である(私はカメラを持ってこなかったことを後悔している)。 その建物は双子で、もう一軒が左側に密接・連結している(シャム双生児のように)。最初に気がついた巨大建築の背後にはそれよりも背の高い重機が既に姿を見せていて、それがすぐにでも破壊される運命を指差していた。

私たちの遠足は既に目的地に着いた後だったらしい。それでも、私と彼=存在は北極のように凍り付いた暗い道を辿っていた。氷の内に封じ込められた大きな魚体のようなもの(絶妙にその形姿をくねらせている)を左手に通り過ぎたとき、私は彼=存在に「これは鯨だ」と言ったようだ。

共謀罪。病的にモラルを外在化した人間たちの出現に適応して社会がモラルである世界を立法化した興味深い試みである。外側が内側を決定する。われわれは既に人間=共謀罪に包囲されつつあった。これは反転したプロレタリアート独裁である。すべては外側が決定する。あらゆる内部は唯一の外部のためにある。この位相幾何学を理解しないものは生き残ることができない。私の私的事態は立法府を先取りしていたのだ。完全病者は既に権力=正義の化身である。彼は共謀罪の完璧な内面化に成功している。憑依現象。日本列島憑依!