アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

教會(最新の改稿)


孤独者
戦場の犬たち
帰宅した傭兵を待つものは
雨の降り続けるテレビが一台

われわれはどこにいても
だれと一緒でも孤独だから
あらゆる空間にテレビが現れる
われわれの広場には巨大なテレビがある

われわれは生まれつき傷ついているのだ
傷ついた犬のように
自分の傷をどうしてよいかわからないでいるのだ
テレビを見れば何かわかるかも知れない
毎日
毎晩
テレビを見続ける
風呂のなかでもテレビを見続ける
排泄中も
分娩室でも

なぜならテレビが唯一の教会だから
敬虔なわれわれは寝室にもテレビを置かなければならない
神聖な性の営みはテレビの下で行わなければならない
なにごとであれテレビに見られていなければ意味が無い
われわれの生の意味をテレビが発生する
われわれの無意味な生の意味を

テレビから遮断されることは生の終わりだ
人間をやめることだ

そこに楽園=解放を見るものたち
それこそが異端である
審問官たちはまず彼/彼女の衣服を剥ぎ取り
悪魔の刻印をその裸体に探すだろう
テレビに背くこと
それは火炙り・穴吊し
人間の想像力の及びうる限りのあらゆる拷問に曝される可能性を意味する

「逃げ道は無いのかって?」
「そうだな、これはフィクションかも知れないが、昔挑戦した女子高生たちがいたらしい。いや完全にフィクションだがそれがどうしたというのだ?」
伊豆高原の廃墟モーテルの話だろ?」
「そこには壊れたテレビと謎のビデオが置いてあって・・・」

あらゆる家庭
あらゆる広場のテレビというテレビから這い出してくる
われらの貞子が!
解放者であり贖罪者である貞子が!
あらゆる教会を炎上させる
真の解放者である貞子が!

地震が解いてしまった古井戸の封印
われわれこそが貞子
髪振り乱し泥まみれに這いつくばり進む
われわれの呪いは千年経っても消えることがない