アームチェア人智学日記 改

或る奴隷博士の告白

砂(第二稿)

「死体は砂のなかに埋めることだ」
言葉たちが私の死体に砂をかける
砂の上を去って行く觀念の足跡
腐肉から流れ出す欲望が砂のなかに消えていく
眼球の孤独
世界の拡がりは砂に埋めよ
頭蓋から外れた脳髄は青空に驚く

肉体の遠近法
永遠に届き得ぬその消失点で
滴り始める私の血
だらしなく流れ落ちる私の精液
漂着する耳の残滓

私は宇宙に開いた穴のようなものだった
私は宇宙の砂時計だった
私の人生は私の穴を通して流れ落ちる砂だった

私は私の砂時計のなかで
首まで砂に埋もれたその時ようやく
自分が生きたいことに気がついた

「死体は砂のなかに埋めることだ」
言葉たちが私の死体に砂をかける
砂の上を去って行く私の足跡